法人税において、損金と益金の計上には、会計上と税法上の違いが存在します。
この記事では、法人税における損金と益金の不算入について、会計上と税法上の違いによる不算入部分について詳しく説明します。
会計上と税法上の損金の違い
会計上と税法上の損金・益金の違いには、以下の理由があります。
- 税法は、租税の公平な課税を目的としており、会計上は、企業の経営状況を適切に把握することを目的としているため、両者には一定の違いが生じる。
- 税法は、社会的な公益を図ることを目的としており、会計上は、企業の経済活動を適切に把握することを目的としているため、両者には一定の違いが生じる。
損金と益金の不算入の具体的な事例について
では実際に損金と益金の不算入になる項目についてみていきましょう。
損金の不算入について
今回抑えておきたいポイントは、交際費、寄附⾦、役員報酬の損⾦不算です。
交際費の損⾦不算⼊⾦額
そもそも、税法上の交際費とは、得意先や仕⼊れ先などに対する接待や慰安、贈答等の⾏為に対して⽀出する費⽤をさします。
担当されている税理士さんに聞けば、交際費は損金として計上できると答える方が多いと思います。
厳密にいうと、これらの交際費は、会計上は費⽤として計上されますが、税法上は、原則として損⾦として認めていません。
ただし、資本⾦を基準にして、⼀定の範囲内までは損⾦として算⼊することができます。
資本⾦損⾦算⼊限度額
1億円以下の法⼈
①年間交際費⽀出額のうち800万円以下の⾦額
②年間交際費⽀出額のうち飲⾷⽀出額×50%
①と②のいずれかを選択
1億円超の法⼈
年間交際費⽀出額のうち飲⾷⽀出額×50%
年間交際費⽀出額のうち飲⾷⽀出額×50%を選択すれば、上限がありませんが、単純に800万円以上の交際費を計上する場合は、1600万円以上の飲食支出があることになります。
これほどの金額の交際費を使うのは、実際に少ないため、1億円以下の法⼈は、800万円以下の金額を不算入とさせることが多いようです。
寄附⾦の損⾦不算⼊⾦額
法⼈税法上、寄附⾦はつぎの4種類に分類されます。
① 国⼜は地⽅公共団体に対する寄附⾦
② 財務⼤⾂が指定した寄附⾦
③ 特定公益増進法⼈に対する寄附⾦
④ ⼀般の寄附⾦
このうち、国⼜は地⽅公共団体に対する寄附⾦と財務⼤⾂が指定した寄附⾦については、全額損⾦算⼊が認められます。
⼀⽅、特定公益増進法⼈に対する寄附⾦と、⼀般の寄附⾦については、損⾦算⼊が認められる⾦額に上限が設けられています。
税法上は、企業の収益は、原則として益金として認められます。一方、会計上は、以下の益金は益金として認められません。
益⾦の不算⼊について
益⾦不算⼊になると課税所得が減少します。益⾦不算⼊になるものには、次のようなものがあります。
• 受取配当⾦(ただし、配当の種類によって不算⼊割合が異なる)
• 還付⾦
配当⾦については、⼆重課税を排除する目的で益⾦不算⼊です。
また、還付⾦等とは、法⼈税など、もともと損⾦に算⼊されない税が還付された場合は、益⾦にも算⼊しません。
まとめ
法人税の計算においては、会計上費用として計上されたものでも、税法上は損金として認められないものがあります。
しかし、税法上損金不算入という名目であっても、実際には算入できる項目があるので、勘違いしないようにしましょう。
また、税法上は益金として認められないものもあります。これらの違いを理解することは、法人税の申告・納付において重要なポイントです。